【法務監査分科会】近時の企業不祥事から見る監査・調査のポイントと留意点

ゲートシティ大崎

場所:ゲートシティ大崎 東京都南部労政会館
講師:中村 克己 先生(国広総合法律事務所 パートナー弁護士)

2つの大きな不正事件の解説と、その調査に携わった先生の体験談など、調査に際して押さえるべきポイントと留意点についてご教授いただきました。

組織の内部不正のリスク要因は様々

講義では「営業ノルマと強度のプレッシャー」が要因の一つとなり、悪人ではない社員が不正に手を染めてしまったケースが紹介されました。
もともとは「良い人」だったのに、周囲の環境の影響から道を誤ってしまい、不法行為を行ってしまうというケースは少なくありません。

私が対応した事案で、こんなケースがありました。

【登場人物】

 加害者:店員Aさん
    (仕事熱心で、お店の実質的なリーダー)

 被害者:オーナーBさん
    (ほぼ毎日、仕事をサボって遊び歩いている)

【あらすじ】
※実話をそのまま書けないので、実話ベースのフィクションにしてあります。

お店は大繁盛。
店員Aさんは大忙し。
反対にオーナーBさんは儲かったお金で遊びまくりで、あまりお店に出勤しない。
オーナーBさんは遊んでいるときは携帯電話もメールも無視するので、店員Aさんは業務連絡ができずに困ってしまうことも良くある。
なかでも、何も告げずに愛人と旅行に出かけてしまい、行方がまったく分からない&連絡もとれないという状態が数日間も続くことが度々あり、店員Aさんは頭を痛めていた。
真面目な店員Aさんからしてみれば、これは非常に面白くない。

そして、そんな不真面目なオーナーBさんがお金の管理をしっかりしているはずも無く、仕入先への支払いを忘れたりなどお金のトラブルが起こることもしばしば。
店員AさんはオーナーBさんに対して、「お店に悪影響だし、本当に困る。」と改善の訴えを繰り返すが、効果なし。
それならばお金の管理を自分に任せてほしいとお願いしても、却下される。
「この人には何を言ってもダメだ・・・」と悲観する店員Aさん。
しかしこのままでいてはお店が危うい。「何とかしないと」と店員Aさんは次のような打開策を思いつく。
  →電話もメールも無視するのだから、直接会いに行くしか無い。
  →そのためには「どこにいるのか」を調べられるようにしなければ。
そこで店員Aさんは、オーナーBさんの車にGPS装置を仕掛けた。
さらに、新幹線や飛行機での旅行にも対応できるよう、オーナーBさんのスマートフォンに「スパイアプリ」を仕掛けるという不法行為に手を染めてしまった・・・
そしてそこから、オーナーBさんの重大なプライバシー情報の漏洩が引き起こされてしまった・・・

------------------------------------------------

内部不正は組織の大小を問わずに起こります。
横領や着服などといった「カネ目当て」の不正だけではありません。
組織を害する意図はなく、組織にとって良かれと思って不正をしてしまうこともあるのです。
「うちにそんな悪いことをする悪人はいないよ!」という会社であっても、絶対に大丈夫ではないということを知ってください。