デジタル・フォレンジックの専用ツールは沢山ありますが、それぞれ得手不得手があり、万能なものは存在しません。
特に、レアケースやニッチな需要に対応できるツールは乏しいです。
デジタル・フォレンジック専用の有償ツールは世界中のメーカーが開発していて、用途ごとに合わせて設計された多種多様な製品があります。
ツール毎に出来ること・出来ないことや、得手不得手はありますが、いずれも用途を間違わなければ調査に際して大いに役立つものです。
作業を大幅に効率化したり、面倒な処理を自動化したり、AIが分析・解析をサポートしたりなどなど。
有償ツールはとても高機能・高性能であり、現代のデジタル・フォレンジックの現場において有償ツールの使用は不可欠です。
しかしツールに頼りきってしまうと、「ツールで出来る範囲」でしか調査ができないという問題が出てきます。
例えばツールが対応していない機器やデータは分析・解析を一切できませんので、ひいては調査自体が不可能ということになります。
冒頭で述べた通りツールは用途ごとに多種多様ありますので、大半のケースではツールを使い分けたり複合的に組み合わせたりすることで対応できるのですが、一部のケースでは既存のツールだけではどうにもならないという事もあります。
既存のツールで対応できない理由はケースごとに異なりますが、よくある例は次のような場合です。
◆部品や製品の仕様による場合。
◆OSやソフトウェアの仕様による場合。
◆セキュリティ機能による場合。
◆ツールを妨害するマルウェアによる場合。
◆複数の要因(使用状況、経年劣化、発生時期など)が積み重なった場合。
などなど。
そしてもう一つ大きな理由があります。
それは「メーカーは、売れないツールは作らない。」ということです。
一部のレアな用途のためのツールを作ったとしても、需要が少ないためほとんど売れません。
ツールを作るには研究開発などに多額の費用がかかりますし、開発後の製品化や販促活動にも多額の費用がかかりますし、ほとんど売れないのであればメーカーは深刻な大赤字になってしまいます。
だから当然、メーカーはそのようなツールを作ろうとはしないのです。
これらのような理由により、既存のツールでは対応できないケースがあるのです。
前述の「ツール非対応事案の問題」に対応するために、当研究所では次に挙げるような応用技術の研究と、それを元にした調査用の独自ツールやシステムの開発を行っております。
日進月歩で変化し続けるコンピュータやIT/ICTの分野では、日々の学習やトレーニングが不可欠です。
応用技術を研究開発するためには、応用の元となる技術を習得しなければ当然のことながら不可能です。
当研究所では研修サービスやメーカー公式のトレーニングサービス、講演会、ワークショップなどに参加し、研究開発の「種」となる技術の習得や情報の収集に日々努めております。
それはセキュリティ分野の特殊な研修や集会だけに限りません。
コンピュータ関連の広い分野で学習・トレーニングを行っております。
例えば電子工作、センシング技術、素材や部品などといったコンピュータの物理的側面に関する技術や、産業技術、IoT技術などなどセキュリティに限らず幅広くコンピュータ関連の技術を学んでおります。
また研修だけでなく交流会やコミュニティーなどにも参加し、各方面のエンジニアや営業さん達とリアルな生の情報や意見を交換しあっております。
そして、そこから得られる「気付き」を調査技術の研究開発に活かしております。